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路地裏バーのからくり書庫(税法)

税法の論点・判例をつまみに,ウィスキーでも飲みながらどうぞ。

役員給与(アメリカ法)3-経費算入の可否の判断基準

「給与又はその他の報酬」の「合理的支給額」の判断基準は,二つに分けられます。

 

既に述べましたが,「給与又はその他の報酬」の「通常かつ必要な」経費算入の可否は、判例財務省規則(Treas. Reg. § 1.162-7(a))によると、

(1)金額が合理的か否か、

(2)事実として純粋に役務に対する支払か否か、

という2つの基準で判断する、とされています。

 

前者の基準は、金額が合理的か否かが問題となっているので「金額基準(amount test)」と呼ばれています。

後者の基準は、事実として純粋に役務に対する支払か否かは、支払の際に支払者に給与又はその他の報酬の支払の意図があったか否かで判断すると多くの判決で述べられてきたために、「目的基準(intent test)」と呼ばれています[1]

 

大半の判決では、金額基準を満たすかどうかに主に焦点が当てられており、金額基準が目的基準の前に検討されてきました。その理由は2つあります。1つ目は、大半の事例では当該被用者は役務を実際に提供しており、その場合には目的基準は満たすものと考えられてきたからです[2]。2つ目は、当該支払は事実として純粋に給与又はその他の報酬の支払であることは、支払金額が合理的であることによりしばしば推測されうると考えられてきたからです[3]

 

[1]内国歳入法典162条(a)(1)に関する著書や論文の中では「金額基準」と「目的基準」という呼称がしばしば用いられている為(See e.g., Anne E. Moran, Reasonable Compensation, 390 BNA Tax Mgmt. Portfolio, at A-3 (4th ed. 2009).)、本稿でもこの呼称を採用しこの呼称で統一します。

 「目的基準」については、支払の「経済的実質(economic reality)」又は「形式より実質(substance over form)」を見るという基準である、と言うほうが適切である、という見解もあります。Michael Q. Eagan, Reasonable Compensation and the Close Corporation: McCandless, the Automatic Dividend Rule, and the Dual Level Test, 26 Stan. L. Rev. 441, 444 n.21 (1974). また、支払の目的は、事実として純粋に役務に対する支払であるか否かの判断の際に考慮する一要素にすぎないと述べる判決(UAL Corp. v. Commissioner of Internal Revenue, 117 T.C. 7, 13-14 (2001))もあります。

 目的基準という呼称は適切であるかという問題は省略し、ここでは、事実として純粋に役務に対する支払か否かという基準は「目的基準」と呼ぶことにします。

[2] See, e.g., Shaffstall Corp. v. United States, 639 F.Supp. 1041, 1047 (S.D.Ind. 1986). See Edward M. Alvarez, The Deductibility of Reasonable Compensation in the Close Corporation,11 Santa Clara L. Rev. 20, 23-24 (1970).

[3] See James P. Holden, Has Court of Claims Adopted an “Automatic Dividend“ Rule in Compensation Cases?, 32 J. Tax’n 331, 332 (1970).